YKK株式会社 2021年度 連結決算のポイント

2022年05月13日

I. YKKグループ連結業績

 当期における日本経済は、新型コロナウイルス感染症による厳しい状況が徐々に緩和される中、消費者マインドの持ち直しが見られ、経済社会活動の正常化が緩やかに進みました。世界経済は、米国や欧州各国においては経済対策等により個人消費が堅調に推移した一方で、中国においては電力制限による企業の生産活動停滞や新型コロナウイルスの感染再拡大等により、年度後半に景気の減速感が見られました。世界的な半導体の需給逼迫や供給面での制約、原材料価格の高騰が続く中、ウクライナ情勢による先行き不透明感も増しており、今後の動向を引き続き注視する必要があります。
 このような環境の中、第6次中期経営計画(2021年度~2024年度)の初年度である当期は、前中期から継承する中期経営ビジョン「Technology Oriented Value Creation『技術に裏付けられた価値創造』」のもと、第6次中期事業方針として、当社では「新常態下での持続的成長~多様な顧客要望の実現と顧客創造~」の実現を、YKK AP(株)では「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」を目指し、それぞれの事業を推進してまいりました。2020年度は年間を通じて新型コロナウイルス感染症の影響を大きく受けた一年でしたが、当期はその反動による需要増加に上手く対応できたことや、原材料・資材価格高騰等の減益要因を各種コストダウン施策により最小限に抑えられたことで、ファスニング事業を中心に、未曾有の事態に陥った昨年度から大きく業績を回復しました。
 その結果、当期の連結業績は、売上高は過去最高となる7,970億円(前期比21.9%増)、営業利益は601億円(前期比128.3%増)、経常利益は639億円(前期比112.3%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は440億円(前期比154.3%増)となりました。

II. 事業別連結業績

 YKKグループでは、2021年度から組織再編を伴う新たな経営体制での事業活動を行っております。それにより、以下の前年同期比較は、当該組織再編を反映した組替後の業績で比較しております。

(ファスニング事業)

 当期のファスニング事業を取り巻く事業環境は、世界的な新型コロナウイルスワクチンの普及とそれに伴う活動制限緩和により、欧米を中心とした消費市場が回復基調となり、アパレル小売市場でも回復の傾向が見られました。一方で、各地で繰り返される変異株による感染再拡大により工場の操業停止等を余儀なくされるなど、事業活動への影響が生じました。世界的なサプライチェーン混乱や半導体供給不足に加え、ウクライナ情勢等の地政学リスクも懸念されており、先行きを見通しにくい環境が継続しております。
 このような事業環境のもと、市況の回復に伴う増販と継続したコストダウンと納期対応、各地域での供給体制強化による顧客対応強化によって、販売を大きく伸ばしました。
 地域別では、すべての地域で増収となりました。日本では、ファスニング事業全体の販売好調により材料供給等のグループ会社向け販売が増加しました。Americasでは、半導体不足により自動車向けでは低調となったものの、アパレル需要の回復による販売増加により増収となりました。Europeでは、トルコ社のジーンズ向けを筆頭に加工輸出好調、高級鞄向けの販売も好調となりました。ISAMEA(India/South Asia/Middle East/Africa)においては、米国市場での需要回復を着実に捕捉し販売を伸ばしました。ASEANでは、日米欧向けの加工輸出市場の回復および施策による顧客獲得により販売を大きく伸ばしました。中国では、市況回復による需要の高まりに加え納期対応等の施策による新規顧客の獲得等で増収となりました。
 その結果、売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比40.7%増の3,481億円となりました。営業利益は、原材料価格高騰や輸送運賃上昇の減益要因があったものの、市況回復に伴う販売ボリュームの増加と操業度の向上、価格改定及び継続的なコストダウンによる増益要因が大きく、前期比601.6%増の423億円となりました。

(AP事業)

 当期のAP事業を取り巻く事業環境は、日本国内においては、新型コロナウイルス感染症が再拡大したものの、ワクチンの普及が進む中、経済活動の正常化や各種住宅取得支援制度の下支えもあり、新設住宅着工戸数は前年を上回りました。海外においては、北米では、ビル建材の市場が回復するとともに、住宅建材では着工戸数が好調に推移しました。中国では2020年から続く政府による不動産規制の厳格化継続を受け市場は低迷、台湾では住宅着工が回復したものの、職人不足による現場遅延が深刻化、インドネシアでは同感染症の拡大があったものの、政府の景気刺激策を受け、高級戸建市場が回復しました。日本国内・海外とも、経済の回復等による需要増や環境規制等の影響による供給不足に起因した需給逼迫と原材料・資材価格の高騰が続きました。
 このような事業環境の中、第6次中期事業方針として掲げた「商品による社会価値の提供とモノづくり改革の実現」のもと、事業を推進してまいりました。
 日本国内においては、ウィズコロナにおける取組みとして、オンラインイベントやWEB展示会等の新しいコミュニケーション手段を継続し、営業・消費者接点の強化を図ってまいりました。住宅事業では、樹脂窓とアルミ樹脂複合窓による高断熱化を推進し、高断熱窓化率を70%まで高めることができ、また、コロナ禍における在宅ニーズの高まりもあり、住宅リノベーション事業が伸長しました。エクステリア事業では、耐積雪・耐風圧カーポート及び門扉・フェンス等の提案強化により販売が増加しました。ビル事業では、新築分野の受注強化と改装提案の強化を進めてまいりました。
 海外においては、米国のビル建材では市場の回復を受け販売が増加、住宅建材では着工戸数の増加により販売が増加しました。中国内需においては、厳しい事業環境を受け、販売は前年を下回る結果となりました。台湾では高級住宅市場において販売が増加、インドネシアでは市場の回復により販売が増加しました。
 その結果、AP事業の売上高(セグメント間の内部売上高を含む)は、過去最高となる、前期比10.8%増の4,463億円となりました。営業利益は、国内では販売増加や価格改定、製造コストダウンによる増益要因があったものの、原材料・資材価格の高騰や市場競争の激化、販管費の増加などにより減益となり、全体では前期比15.2%減の173億円となりました。